東日本大震災と原発事故から丸10年が経ちました。この10年間、福島で原発事故に被災した人たちは、再び穏やかで健やかに生きるために、誰もが手探りでさまざまな選択を続けてきました。そんな中で福島の人たちは、県外の方々の優しさと励ましと、そして行政の取り組みに対しての不信感と、いろいろな感情がない交ぜとなって我慢を続けてきたように感じます。
それは、日常に一見平穏な暮らしが戻ってきたこと。心を置き去りにした「復興」が街中を包み込んでいくこと。これらが、「復興」という美麗麗句とは反対の、さまざまな形での「分断」を人々に生んでいるからです。そして福島でも、被災地と言いつつ東京オリンピックを直前に原発事故が終わったかのようなムードが蔓延していて、着実に風化は進んでいます。
私は「復興」という言葉に隠され、うやむやにされた部分を問題としつつも、その上で、福島に住む人々が前向きに、元気になっていくことは絶対に必要だと思っています。そして、そのバランスの加減が今後の福島での活動のテーマだと感じています。
そのため今回の冊子では、10年前のあの時に何があったのかの掘り起こしと、これまで学んできた経験を今後に活かすことを念頭に企画しました。日本では様々な事象が忘れ去られていきますが、記憶・記録の継承に向けて、ここ福島から良いことも悪いことも伝えていきたいと思います。それが、未来に向けて子どもたちを守っていくことにつながると信じるからです。
認定NPO 法人ふくしま30 年プロジェクト
理事長 佐原真紀