変わることのできない「何か」を越えて

福島第一原発事故による災害から丸10年を迎えるなか、自治体では保存期間が終了したということで、震災時の公文書の一部が通常の公文書同様に廃棄 (※1) されています。また、伝承館には資料の保管と活用の役割がうたわれていますが、福島県は震災関連の公文書の収集基準が決まっていないとして、自治体に対して積極的な動き (※2) を見せていません。
未曾有の原発事故から10年も経たずに、「終わったこと」として公文書という重要な資料が散逸しています。この項では、市民が行政情報公開で得た情報から究明した宮崎・早野論文問題を基に、公文書が過去の課題の記録であり、同時に将来に向けた重要な資料であることを確認します。

宮崎・早野論文問題概要

福島第一原発事故後、伊達市はいち早く除染計画と健康管理計画を策定して市民の放射線防護対策を進め、2011 年7月から外部被ばく線量測定のためのガラスバッジ (※3) を配布、また、内部被ばく測定としてはホールボディカウンタ(以下、WBC) (※4) による測定を行いました。
それから4年が経過した2015年、伊達市は宮崎真5福島県立医科大学(以下、県立医大)助手 (当時) と早野龍五 (※6) 東京大学教授 (当時) に、前述の測定データを利用した論文の執筆を依頼しました。しかし、この測定データの提供手続については、市の個人情報保護条例に違反しているのではという疑義が生じました。また、論文作成には研究対象となった市民への説明や個々に同意を求めるインフォームドコンセント (※7) が必要ですが、それも行われてはいませんでした。さらに、同意者以外の不同意者や未回答者の情報も提供されていたことが判明し、論文を取り巻く問題は一挙に国の「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針 (※8) 」違反へと拡大、2018年12月14日には新聞テレビ等で報じられ社会問題化しました。
伊達市議会特別委員会(2020)「議会被ばくデータ提供等に関する調査特別委員会中間報告 (※9) 」(2020年9月24日)より要点抜粋


除染


伊達市の放射線防護対策は、2011年4月21日に霊山町の旧下小国小学校の校庭で表土除去を試み、空間線量率の低減が確認された (※10) ところからはじまりました。そして、1カ月後の5月26日に仁志田昇司市長(当時)の専決処分で放射能対策事業10億円の予算確保 (※11) と、6月には独自に除染に取り組む方針が打ち出され、放射能除染対策プロジェクトチームが発足しました。7月1日付で田中俊一氏 (※12) に放射能対策の市政アドバイザーを委嘱し、10月には除染基本計画の発表等、政府より先行して除染に着手したことで伊達市の動き (※13) は注目されました。
2011年10月に発表した伊達市の除染基本計画第1版では、除染を効果的に進めるために放射線量の高い地域を優先するとして、積算放射線量が年間20 mSvを超えると予想される特定避難勧奨地点から、年間1 mSvを超える低線量地域まで4段階の区分がありました。
その後、2012年1月1日に施行された放射性物質汚染対処特別措置法に基づいて除染基本計画を改訂し、第2版を8月に発表しました。第2版では前述の区分を3段階に整理し、順にAエリア(特定避難勧奨地点や比較的高線量地域:2,955戸)、Bエリア(年間5 mSvを超える地域:3,912戸)、Cエリア(年間1 mSvを超える地域:15,125世帯) (※14) としました。そして除染の迅速化として、Aエリアの場合は宅地と宅地周辺林縁部20m程度を基本に地域の面的な除染、Bエリアは宅地回りを中心とした除染、Cエリアは「ホットスポット(地表1 cmの高さで3 μSv/h以上)」を中心とした除染と、エリアごとに除染方針と作業方法 (※15) を指定しました。


これと対照的に、同じように早期から放射線防護対策を開始した福島市や郡山市は、市内の全戸除染 (※16) を計画しました。このように、同程度の汚染があった自治体と伊達市とを分かち特徴づけるものが、地域を汚染度に合わせてエリア分けし、面的除染からホットスポット除染まで複数の手法を駆使するというものでした。しかし、市内の7割を占めるCエリアの住民からは、ホットスポットの除染だけではなく、面的な全戸除染を望む意見が根強くありました。
そして、2014年1月の伊達市長選挙において、仁志田市長の対抗馬候補となる高橋一由氏がCエリアの全戸除染を公約に掲げました。市長選を前に仁志田市長もこれまでの除染政策を変更して、住民が希望する場合にはCエリアであっても全戸除染に応じる方針へと転換 (※17) しました。結果として仁志田市長は再選しましたが、Cエリアが公約通りに除染されることはありませんでした。
仁志田市長は市長選の1カ月後、『だて復興・再生ニュース第11号』の巻頭言「ホットスポット除染で3マイクロは高いのでは… (※18) 」において、「心の除染」という除染の新たなキーワードを記しました。これは安心のための物理的な除染の代わりに、住民の不安解消に個別に放射能の説明や相談に乗ることを指しています。
伊達市は2月までに回収した除染に関するアンケート調査 (※19) を基に、4月からCエリアフォローアップ対応(以下、フォローアップ) (※20) 事業を開始しました。6月には住民の要望把握のためのフォローアップ対策チーム(以下、対策チーム)が編成され、除染希望の受け付けが開始されました。対策チームは除染希望宅に訪問、または電話で除染対策について説明し、場合によっては空間線量率を測定のうえ、地表1 cmの高さで3 μSv/h以上の場合は除染を行ないました。この除染基準はこれまでのCエリア基準と変わらないため、対策チームの7月末時点での戸別訪問・電話の対応件数は411件にもかかわらず、除染まで行ったのは5件に過ぎませんでした。
住民の期待がかかったCエリアの全戸除染でしたが、「心の除染」という言葉とともに行われたフォローアップ事業により、仁志田市長は選挙時の公約を実質的には反故にしたことになりました。


ガラスバッジ


原発などの放射線を取扱う施設で働く作業者は、法律によって定期的に外部被ばくと内部被ばくの測定が義務付けられています。外部被ばくの測定には個人線量計を使用し、内部被ばくの測定にはWBC が用いられます。しかし、福島第一原発事故により職業人ではない一般の市民が、これらの測定器を使用して個人ごとの被ばく線量を測定する事態となりました。
2011年夏以降、福島県内の各自治体は市民の個人ごとの外部被ばく線量を把握するためにガラスバッジタイプの個人線量計を配布、そして、内部被ばく測定のためにWBCの利用をはじめました。ただし、ガラスバッジは、放射線管理区域内で放射線作業従事者の被ばく線量を測定するためのものであり、福島第一原発事故によって放出され、あたり一面に存在する放射性セシウムからの外部被ばくを測定することは通常外の使用と言えました。しかし、原発事故という未曽有の非常事態を前に、自治体は市民の安心のためにガラスバッジの変則的な使用を進めていくことにしました。
伊達市では、2011年7月末から8月初めにかけて妊婦と15歳以下の子ども8,614人にガラスバッジを配布し、個人の外部被ばくの線量測定を開始 (※21) しました。9月になると特定避難勧奨地点に指定された地域の住民1,439人へも配布し、2012年7月からは対象を全市民65,392人 (※22) に拡大しました。この一斉配布による測定では、市民の8割ほどにあたる52,783人が参加 (※23) し、1年間の継続測定をしました。その後も1年ごとのガラスバッジ測定は配布対象を希望者のみにするなど縮小していきますが、全市民を対象としたガラスバッジの外部被ばく測定は独自のものであり、エリア分けの除染とともに伊達市の放射線防護対策を特徴づけていました。
しかし、正確なデータを記録するためには子どもと大人、男女別でガラスバッジの着用位置に指定があり、その上、学校や仕事場でも装着し続けなければなりません。また、東京新聞の取材では、ガラスバッジを家に置きっぱなしにして携帯していない例 (※24) もありました。住民の外部被ばくの実態を得るために伊達市の試みは画期的ではありましたが、数万人単位の人々の管理という点で困難さをともなうものでした。


論文化


仁志田市長は2014年10月に、パリで開催のIRSN(フランス放射線防護原子力安全研究所)等が主催の国際会議に招聘され出席しました。このときに同席した県立医大の宮崎氏から、伊達市の膨大なガラスバッジのデータを分析することを提案されたことが論文執筆に至るきっかけ (※25) となりました。これを受けて、仁志田市長は宮崎氏と同じく会議に出席していた東京大学の早野氏に相談し、分析したデータの「論文化」と世界へ向けた情報発信へと取り組んでいくことになりました。
伊達市は2015年1月に宮崎氏に市政アドバイザーを委嘱し、定期的な打ち合わせを重ね、論文執筆のための準備を進めました。宮崎氏と早野氏の研究は、伊達市から提供された個人データを匿名化し、世帯ごとの除染エリアやガラスバッジの測定結果、除染開始日及び終了日、WBC測定結果を分析する (※26) ことで行われました。「論文化」の話が持ち上がってから2年が経過した2016年12月、宮崎氏が筆頭著者、早野氏が共著者というかたちで、学術研究誌『Journal of Radiological Protection(以下、JRP)』に論文が発表されました。この論文は同誌にシリーズで発表される予定のうちの第1論文 (※27) で、後に両著者の名前から宮崎・早野論文と呼ばれることになりました。
同論文では政府が行った航空機モニタリングの周辺線量率と、伊達市が持つ個人ごとのガラスバッジの外部被ばく線量との相関を検証しました。航空機測定から得られた市⺠の住居付近の空間線量率と個人の積算線量率には相関が確認され、それは空間線量率に0.15をかけたものとほぼ等しくなったとしています。政府が示す個人の外部被ばく線量の係数は、屋内外の滞在時間や家屋の遮蔽効果を考慮して空間線量率に0.6をかけたものでした。しかし、第1論文ではその経数は政府の示す数値の4分の1に過ぎないとし、もともとの政府の指標が過大評価だと指摘 (※28) しました。

第2論文 (※29) は2017年7月に発表され、伊達市居住者の生涯にわたる被ばく線量を考察し、除染による個人の外部被ばく線量への効果を検証しました。Aエリアの特定避難勧奨地点に生涯(70年と仮定)居住した場合、追加被ばく線量は18 mSvを越えないと推定し、避難や除染の有無は、個人線量の低減には明確な影響を与えないことが示されました。
そして、宮崎氏と早野氏は第2論文の結論において、第1論文で提示された係数0.15が一般的に成り立たない場合があったとしても、小規模の個人の外部被ばく線量調査で補強すれば、定期的な航空機モニタリングによって汚染地域に居住する住民の生涯線量を評価することが可能であると信ずる (※30) 、と記しました。これは、航空機モニタリングの測定結果さえ得れば、大規模にガラスバッジを用いずとも個人の外部被ばく線量は把握可能であることを示唆していました。
『JRP』での論文のダウンロード数については、第1論文63,263ダウンロード、第2論文24,686ダウンロードと、当初の「論文化」による世界に向けた情報発信という目的を達成しました。
そして、宮崎・早野論文は2018年6月22日開催の第141回放射線審議会総会 (※31) の議題4「東電福島第一原発事故に関連して策定された放射線防護の基準のフォローアップについて」の資料 (※32) として取り上げられました。そのまとめには、「個人線量の平均値は空間線量率から換算式で推定される被ばく線量に比べて低い傾向にあった」「空間線量率と実効線量が関係付けられている基準は、元々保守性を織り込んだ設定であったが、結果としてさらに相当程度の裕度があったといえる」と結論付けられていました。

検証

伊達市では、2011年5月に仁志田市長が専決処分で10億円の放射能対策事業費を用意するなど、強力なリーダーシップを発揮して放射線防護対策を進めていきました。それに対して、市民はどのような思いで見ていたのか。
市内在住の島明美氏は、自身の生活圏内に福島第一原発事故由来の放射性物質が存在する疑問や理不尽さをSNS上で発信し続けていました。現地に住む市民としての思いを継続的に発信していくことで、福島に関心を持つ様々な人とのつながりを築いた島氏でしたが、2016年春には、その積極的な発信に注目した黒川眞一 (※33) 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(KEK)名誉教授からのメッセージを受けとることになりました。島氏は黒川氏とのメッセージのやりとりを続けるなかで、黒川氏が宮崎・早野論文について抱いた数々の疑問点についての説明を受けました。黒川氏の説明を受けた島氏は、外部被ばく線量の係数など合理性のない論文の元となったのが伊達市住民のデータであることから行動を開始しました。
黒川氏は2017年5月、『論座』に「被災地の被曝(ばく)線量を過小評価してはならない」を発表して宮崎・早野論文への批判 (※34) を行いました。また、島氏は宮崎・早野論文関連のすべての書類を伊達市への行政情報開示で入手し、そして、黒川氏による定期的な勉強会「黒川ゼミ」を開催していきました。
「黒川ゼミ」では、黒川氏が福島市に赴いて宮崎・早野論文の解説を行ないましたが、オンライン配信を用いることで遠方にいる支援者や関係者も参加することができました。そして「黒川ゼミ」の参加者には、2014年1月の伊達市長選でCエリアの全戸除染を公約に掲げた高橋一由議員(現・伊達市議会議長)などの伊達市議会議員の姿もありました。
島氏の行政情報開示によって、黒川氏の論文検証はさらに進みました。そして、宮崎・早野論文の新たな問題点として、研究に同意していない市民のデータ使用や研究が行われることについて市民に説明がなかったことなど、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」違反であることが判明しました。それを踏まえて、高橋議長は2018年12月6日の伊達市議会で、議長としては異例の一般質問を行ないました。はたして、議会上で宮崎・早野論文が同意なき住民データの使用によって書かれたことと、伊達市条例にある個人情報の取り扱い違反であることが明らかになりました。


急転


伊達市が本人の同意なきデータを宮崎氏と早野氏に無断提供したことは、12月14日に共同通信の配信記事 (※35) やNHK福島等で報道され、追って各メディアが報じました。早野氏は2019年1月8日、文科省記者クラブに「伊達市⺠の外部被ばく線量に関する論⽂についての⾒解」を貼りだし、70年間の累積線量計算を3分の1に評価していたことと、それが意図的ではなかった (※36) ことを発表しました。
1月11日には『JRP』が、第1論文と第2論文について同意無きデータの使用と解析結果に対しての倫理的懸念表明をしました。また、1月25日開催の第143回総会放射線審議会では資料から宮崎・早野論文が削除 (※37) されました。これについて事務局は、宮崎・早野論文の学術的な意義について全否定されるものではないが、早野氏のコメントを考慮した上で削除したとの説明を行ないました。
黒川氏と島氏は『科学』2019年2月号に、「住民に背を向けたガラスバッジ論文――7つの倫理違反で住民を裏切る論文は政策の根拠となり得ない」を発表して宮崎・早野論文には7つの倫理指針違反があることを指摘しました。そして、黒川氏はその後も『科学』誌上で、宮崎・早野論文の被曝ばく評価を批判的に検討する論考を発表し、『JRP』にも批判論文を投稿していきました。

そして…

伊達市は第三者委員会として、「伊達市被ばくデータ提供に関する調査委員会」を設置しました。調査委員会は2月4日より定期的に開催され、10回目となる2020年3月17日に調査委員会報告書を公表しました。そして、報告書を受けて2カ月半が経過した5月28日に「研究者に対し個人情報を含む外部被ばくデータ等が適正な事務処理を経ないまま提供されていたこと」に対しての伊達市としての見解を公表 (※38) し、行政の事務手続きや個人情報の取扱いに問題があったとの認識を表明しました。また、当然のことではありますが、職員の意識改革や再発防止策等についてのまとめの最後には、関係職員の処分 (※39) が記されていました。
7月24日には、『JRP』が「倫理的に不適切なデータが使用された」として宮崎・早野論文の掲載撤回 (※40) を公表しました。しかし、黒川氏が指摘した解析結果の問題には触れられてはおらず、倫理的問題にのみ絞り込んでの判断となりました。そして、宮崎・早野論文で博士号を取得していた宮崎氏は、論文撤回の決定にともない学位取り消しの申し出をし、県立医大は7月15日に博士号の取り消し (※41) を承認しました。



※1【廃棄】
東⽇本⼤震災と東京電⼒福島第一原発事故で⼤きな被害を受けた岩⼿、宮城、福島3県の42市町村のうち、被災に関する公⽂書を廃棄したか、廃棄した可能性がある⾃治体は計21市町村に上ることが9⽇、共同通信のアンケートで分かった。
「震災公⽂書『廃棄』⾃治体が半数 被災3県42市町村にアンケート」山陽新聞(2020年3月9日付)より引用。

※2【積極的な動き】
全県的な⽂書管理の議論を先送りにしたまま震災から9年半が過ぎ、本年度に⼀部を廃棄した避難⾃治体もある。20⽇開館した伝承館は資料の保管と活⽤が役割だが、県は「市町村の公⽂書に伝承館がどこまで関わるかは議論が必要だ」と腰が重い。
「福島県、震災公⽂書の収集基準定めず ⼀部廃棄の⾃治体も 問われる伝承館での保管・活⽤」河北新報(2020年9月29日付)より引用。

※3【ガラスバッジ】
放射線作業に従事する作業者に対しては、放射線による障害の発生を防止するために常にその被ばく線量を把握するための測定を行うことが法律的な義務になっている(例えば、放射線障害防止法第20条)。個々の作業者の被ばく線量を測定するために、個人モニタリングが実施され、被ばく線量の評価と公式な記録・報告が行われているが、このうち、外部放射線に対するモニタリングには、個人線量計が使用される。
原子力百科事典サイトATOMICA」より引用。

※4【ホールボディカウンタ】
whole body counter. ヒューマンカウンタ(human counter)とも呼ばれ、人間の体内に摂取された放射性物質の量を体外から測定する装置。測定対象はガンマ線放出核種に限られる。
原子力百科事典サイトATOMICA」より引用。

※5【宮崎真】
福島県立医科大学ふくしま国際医療科学センター健康増進センター 副センター長・講師。平成6(1994)年福島県立医科大学卒業。専門分野は画像診断、放射線医学。研究分野は震災後の個人線量測定結果の利用説明、震災後の地域保健活動への助力。
健康増進センター 指導医紹介 より引用。

※6【早野龍五】
物理学者。1952年生まれ。東京大学名誉教授、スズキ・メソード会長、株式会社ほぼ日サイエンスフェロー。東京大学理学部物理学科、同大学院理学系研究科修了(理学博士・物理学)。スイスにある世界最大の物理学実験施設CERN(欧州原子核研究機構)を拠点に「反物質」の研究を行い、98年井上学術賞、2008年仁科記念賞、09年中日文化賞を受賞。
新潮社 著者プロフィール より引用。

※7【インフォームドコンセント】
インフォームドコンセントとは、患者・家族が病状や治療について十分に理解し、また、医療職も患者・家族の意向や様々な状況や説明内容をどのように受け止めたか、どのような医療を選択するか、患者・家族、医療職、ソーシャルワーカーやケアマネジャーなど関係者と互いに情報共有し、皆で合意するプロセスである。
日本看護協会「インフォームドコンセントと倫理」より引用。

※8【人を対象とする医学系研究に関する倫理指針】
研究対象者の福利は、科学的及び社会的な成果よりも優先されなければならず、また、人間の尊厳及び人権が守られなければならない。
厚生労働省(2014)1頁 より引用。

※9【議会被ばくデータ提供等に関する調査特別委員会】
住民の個人線量データが、本人の同意を得ずに論文に使用されていた、いわゆる「宮崎・早野論文」問題をめぐり、伊達市議会は26日、問題解明に向けて特別委員会の設置を決めた。
OurPlanet-TV『伊達市議会「被曝データ提供特別委員会」設置〜宮崎早野論文問題』(2019年6月26日付)より引用。
伊達市議会特別委員会「議会被ばくデータ提供等に関する調査特別委員会 中間報告」より引用。

※10【低減が確認された】
4月21日(木)旧下小国小学校校庭で実証試験を実施。5 ㎝程度の剝ぎ取りでかなりの効果があることを確認した。
伊達市(2014)『東日本大震災・原発事故 伊達市3年の記録』73頁より引用。

※11【10億円の予算確保】
伊達市議会広報委員会(2011)『伊達市議会だよりVol.23』(2011年8月25日発行)9頁より引用。

※12【田中俊一】
昭和20(1945)年、福島市生まれ。東北大学工学部原子核工学科を卒業し、42(67)年、日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)入所。平成16(2004)年、同研究所副理事長。高エネルギー加速器研究機構とともに、最先端研究のためのJ-PARK(大強度陽子加速器施設、茨城県)を整備した。19(07)年、原子力委員会委員。22(10)年、高度情報科学技術研究機構会長。24(12)年、原子力規制委員会委員長。29(17)年9月に退任し、30(18)年1月から福島県飯舘村復興アドバイザーを務める。
「【話の肖像画】原子力規制委員会前委員長・田中俊一」産経ニュース(2018年7月23日付)より引用。

※13【伊達市の動き】
福島県伊達市の除染担当として、半澤隆宏市民生活部次長(当時)のインタビュー記事が朝日新聞オピニオン欄 耕論に掲載されました。
「(耕論)除染、これでいいのか 半沢(ママ)隆宏さん、中西準子さん、細野豪志さん 東日本大震災2年」朝日新聞(2013年3月12日付)。

※14【Aエリア、Bエリア、Cエリア】
AエリアとBエリアの除染実施数については、全戸除染のため戸数での発表となっています。伊達市(2014)『東日本大震災・原発事故 伊達市3年の記録』196頁より引用。Cエリアについては、世帯ごとの空間線量率の測定結果から除染実施の有無を決定するため、世帯数として発表されています。伊達市(2014)『だて復興・再生ニュース第12号』(平成26年3月27日発行)6頁より引用。

※15【エリアごとに除染方針と作業方法】
伊達市(2015)「伊達市実施除染計画(第2版一部改訂)」10頁 より引用。

※16【市内の全戸除染】
公益財団法人 地球環境戦略研究機関(2013)『FAIRDO2013「除染」の取り組みから見えてきた課題 安全・安心、暮らしとコミュニティの再生をめざして』18‐20頁より引用。

※17【全戸除染に応じる方針へと転換】
伊達市の仁志⽥昇司市⻑は8⽇の記者会⾒で、放射線量が⽐較的低い地域の除染について、局所的に⾼い場所だけを対象としてきた従来の⽅針を撤回し、希望する全⼾を除染する考えを⽰した。⼭林除染も4⽉以降に実施する。「市⺠の不安払拭(ふっしょく)」が狙い。26⽇投開票の市⻑選を意識した。
「全⼾除染へ転換 伊達市⻑、選挙を意識」朝日新聞(2014年1月9日付)より引用。

※18【ホットスポット除染で3マイクロは高いのでは…】
伊達市(2014)『だて復興・再生ニュース第11号』(平成26年2月27日発行)1頁 より引用。

※19【除染に関するアンケート調査】
伊達市(2014)『だて復興・再生ニュース第13号』(平成26年4月24日発行)4頁 より引用。

※20【Cエリアフォローアップ対応】
伊達市(2014)『Cエリアフォローアップ対応と伊達市除染実施計画の改訂について』(2014年8月6日)より引用。

※21【個人の外部被ばくの線量測定を開始】
伊達市(2014)『東日本大震災・原発事故 伊達市3年の記録』112頁より引用。

※22【全市民65,392人】
伊達市被ばくデータ提供に関する調査委員会(2020)『伊達市被ばくデータ提供に関する調査委員会 報告書』(2020年3月)4頁 より引用。

※23【52,783人が測定に参加】
伊達市被ばくデータ提供に関する調査委員会(2020)『伊達市被ばくデータ提供に関する調査委員会 報告書』(2020年3月)17頁より引用。

※24【置きっぱなしにする例】
訪ね歩き、やっと18世帯48人分のデータを集めたが、住民が線量計をいつも持ち歩き、正しいデータとみられるのはたったの5世帯8人分(17 %)だった。
「実態とかけ離れる『個人に線量計』調査 7割の家庭で屋内に置きっぱなし 本紙が伊達市で実態解明」東京新聞(2013年12月23日付)より引用。

※25【論文執筆に至るきっかけ】
伊達市被ばくデータ提供に関する調査委員会(2020)『伊達市被ばくデータ提供に関する調査委員会 報告書』(2020年3月)6頁より引用。

※26【分析する】
黒川眞一、島明美(2019)「住民に背を向けたガラスバッジ論文――7つの倫理違反で住民を裏切る論文は政策の根拠となり得ない」『科学』2019年2月号、岩波書店、154頁より引用。

※27【第1論文】
Makoto Miyazaki and Ryugo Hayano(2016) Individual external dose monitoring of all citizens of Date City by passive dosimeter 5 to 51 months after the Fukushima NPP accident (series): 1. Comparison of individual dose with ambient dose rate monitored by aircraft surveys
https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6498/37/1/1 より引用。

※28【過大評価だと指摘】
宮崎⽒は「建物による遮蔽の想定が合っていないなど、⽣活様式や実際の⼈の動きと合わない部分が(政府設定に)ある」と指摘。
「外部被ばく線量...政府推計は『4倍過⼤』 避難・除染の根拠」福島民友(2017年1月9日付)より引用。

※29【第2論文】
Makoto Miyazaki and Ryugo Hayano(2017) Individual external dose monitoring of all citizens of Date City by passive dosimeter 5 to 51 months after the Fukushima NPP accident (series): II. Prediction of lifetime additional effective dose and evaluating the effect of decontamination on individual dose
https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6498/aa6094 より引用。

※30【可能であると信ずる】
宮崎真、早野龍五(黒川眞一訳)(2018)「パッシブな線量計による福島原発事故後 5 か月から 51 か月の期間における伊達市民全員の個人外部被曝線量モニタリング: 2. 生涯にわたる追加実効線量の予測および個人線量にたいする除染の効果の検証」15頁より引用。

※31【放射線審議会総会】
放射線審議会は、「放射線障害防止の技術的基準に関する法律」に基づき、放射線障害の防止に関する技術的基準に斉一を図ることを目的として、文部科学省の所管を経て2012年9月より原子力規制委員会に設置されている諮問機関である。関係行政機関の長は、放射線障害の防止に関する技術基準を定めるときは、放射線審議会に諮問しなければならない。また、放射線審議会は必要に応じ、関係行政機関の長に対し意見を述べる(意見具申)ことができる。
「原子力百科事典サイトATOMICA」より引用。

※32【資料】
放射線審議会事務局(2018)「東電福島第一原子力発電所事故に関連して策定された放射線防護の基準のフォローアップについて」16頁より引用。

※33【黒川眞一】
1945年生まれ。高エネルギー加速器研究機構名誉教授。68年東京大学物理学科卒、73年東京大学理学系研究科物理学専攻を単位取得退学。理学博士。高エネルギー物理学研究所(現・高エネルギー加速器研究機構)助手、同助教授、同教授を経て、2009年に高エネルギー加速器研究機構を定年退職。11年にヨーロッパ物理学会より Rolf Wideroe賞、2012年に中華人民共和国科学院国際科技合作奨受賞など。専門は加速器物理学。

※34【批判】
黒川眞一(2017)『被災地の被曝線量を過小評価してはならない 宮崎・早野論文「伊達市の周辺線量測定値と個人線量の比較」を考える』論座 - 朝日新聞社の言論サイトより引用。

※35【配信記事】
「住民被ばく情報 市が無断で提供/福島県伊達市」沖縄タイムス(2018年12月14日付)

※36【意図的ではなかった】
ryugo hayano @hayano 『本日1/8,文科省記者クラブに「伊達市⺠の外部被ばく線量に関する論⽂についての⾒解」を貼出いたしました.70年間の累積線量計算を1/3に評価していたという重大な誤りがあったことと,その原因,意図的ではなかったこと,今後の対応,伊達市の方々への陳謝などを記したものです→』
Twitterに投稿された早野龍五氏のTweetより引用。

※37【資料から削除する】
放射線審議会事務局(2019)「放射線審議会 第143回総会議事録」9頁より引用。

※38【見解を公表】
伊達市(2020)「伊達市外部被ばくデータ提供に関する調査委員会報告書を受けての市の対応について」より引用(2020年5月28日)

※39【関係職員の処分】
データ提供に関わった職員5人のうち退職者を除く3人を今後処分する。具体的には個人情報を含むデータを上司の決裁を受けずに持ち出したり、福島県立医大にデータに基づく論文作成を依頼する文書の作成日を偽ったりしたことが処分に相当すると判断した。
「伊達市職員3人懲戒処分へ 被ばくデータを無断提供」河北新報(2020年5月30日付)

※40【掲載撤回】
Following the Expression of Concern issued on this article on 11 January 2019, IOP Publishing is now retracting this article.
https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6498/ab9ff0

※41【博士号の取り消し】
宮崎氏のコメントは以下の通り。「私としては、研究者として委託された内容を完遂すること、すなわちデータの再提供を受け論文の修正もしくは再投稿を行うことが責務と考えておりましたが、論文の撤回と研究委託の中止かつデータ再提供が不可能という状況に至りました。責務を果たせず論文の撤回となったこと、また今後本研究に関わることがこれ以上能わなくなったことを、極めて遺憾に思っております」
「同意なく被ばくデータ使用の論文2本を撤回 早野東大名誉教授ら執筆」東京新聞(2020年7月31日付)より引用。


変わることのできない「何か」を越えてカテゴリーの記事